公益財団法人仏教伝道協会主催 こころの絵本大賞 2020

こころの絵本大賞 第4回受賞作品 アリがダンスをおどったら 作・絵 mayfan

大賞の『がまぐちさん』はユニークな発想のユーモラスな作品です。いまはほとんど使われなくなったがまぐちですが、そのがまぐちのくちがねを通しての不思議な出来事を興味深く展開され、最後に見事温泉をほり出すところも楽しい。温泉が町おこしにもなるというテーマもきちんと納得できます。似たような画面が多く、どの人物の表情も卵型というのは気になります。(西本)

物語る絵が丁寧で適切。原画も綺麗な仕事しています。
特にキャラクターが立っていてユニーク。
語彙もこどもには適切で、お話も盛り上がりがあって面白い。
めくる楽しさもあって素直に面白く読めました。
タイトルも決まった。完成度も高い。大賞でしょう。
ただしです。場面によっては文章が長すぎます。
とことんシンプルな言葉のほうが気持ちいいんです。
気持ちいい文章は、また読みたくなります。(藤本)


(出版に際しては一部直しが入ります)

講評

「第5回 こころの絵本大賞」審査経過及び講評

波賀 稔(鈴木出版編集長)

第5回「こころの絵本大賞」の応募総数は、昨年の応募数を大幅に超えて146編でした。締め切り翌日の9月1日と2日の二日間で第一次審査を行いました。応募作品のレベルは全体的に年々アップしているように思います。ただ、絵のレベルが高いものは文章の仕上がりがもう一歩、作がいいと絵のレベルが低いというアンバランスな作品が相変わらず多く、一次審査通過作品の絞り込みには苦労しました。絵本の文章は声に出して読まれるのが普通なので、一次審査では、応募作品を声に出して読みながら、審査を行いました。すると、読みづらい文章や、やたら長い文章、手書きの乱暴な文字で読みにくい作品などもありました。絵本は、読みやすさも考えて作品を仕上げてほしいものです。

一次審査を通して感じたことですが、家族の絆や友情、親子愛などを伝えたい気持ちはよくわかるのですが、それを直接的な言葉でつなげているに過ぎない作品が多かったように思います。そのテーマを創作のストーリーにしなければ絵本にはなりません。
また、それぞれの作品の最初のシーンは、登場人物が手をつないで正面を向いているという構図、登場人物の紹介や作品の紹介がなんと多いことか。紹介はストーリーの中で端的に行って、すぐに本筋にはいったほうがリズムよく展開できます。そして、年配者の作品に多いのが、ご自身の人生を語る絵本です。それはそれで悪くはないのですが、今の子どもたちにも伝わるような内容にしてほしいと思います。「こころの絵本大賞」の応募規定をよく理解し、誰かに読んでもらう絵本は、作者の自己満足ではいけません。もっともっと絵本としてレベルの高い争いができるといいですね。今年はまた、新型コロナを題材にした作品もちらほらありました。
そうした146編の作品の中から、一次審査では20作品を選び、9月14日に、児童文学者の西本鶏介先生、絵本作家の藤本ともひこ先生、そして、編集者の波賀が、仏教伝道協会の会議室に会して最終審査を行いました。そして、大賞に輝いたのが「がまぐちさん」です。絵、文ともにレベルの高い作品でした。シャッター街となりかけた商店街を復活させるという現代的なテーマも良かったと思います。おしくも、優秀賞となった「らいふ」は、シンプルな絵本であり、メッセージが伝わる絵本でしたが、メッセージ性の強さが、災いしたかもしれません。「のどぼとけ」はデッサン力の優れた作品で、ユニークな展開でした。やや、大人っぽいところが大賞を逃してしまいました。創作民話風の「まつりのひに」も高評でした。各賞の講評は、西本先生、藤本先生が詳しく述べられていますので、ご覧ください。
<第5回 こころの絵本大賞 講評>2020
西本 鶏介
どんなお話であろうと「こころの絵本」が求めるテーマがきちんと伝わる作品でありたいものです。長々しい文章に絵をつけただけのものは、絵本として表現することの意味を忘れた作品といえます。いつも感じることは、絵はともかくお話づくりが弱い。どうしても類型的な発想になりがちです。絵を描くだけではなく、すぐれた童話を数多く読んでほしいものです。
<第5回 こころの絵本大賞 講評>2020
藤本 ともひこ
「絵本」って面白い。絵と言葉を駆使しての総合表現。やろうと思えば鉛筆と紙があればなんでも表現できる。こんな面白いことはない。だから人は描き続けるのでしょう。

ここに応募したあなたも、そんなことに魅せられたひとりだと思います。しかしです。おもっていることを、いざ紙の上に並べてみようとすると、あら困った。なかなか思うようには、出現させられないことに、はたと気づきます。実は、どんな創作も、そこからがスタートなのです。不可思議なことに、どんなに学んでも、どんなに考えても、どんなに技術を磨いても、出現してくれません。ところが、ある日突然、ぽろっと出たりするのです。一部だったり、全体だったり。そんなときを我がものにするためには、どうすればいいのか。実は皆目わかりません。ただひとつ言えることは、最後まで諦めずに思い続ける。それだけです。

こんな時代の真っ只中で、もがいたり、楽しんだり、笑ったり、泣いたりの試行錯誤右往左往の作品が集まりました。最後まで描き切って応募したというだけで、ひとまず拍手を送ります。

優秀賞 らいふ 作:上白岩 尚吾

優秀賞 らいふ 作:上白岩 尚吾
優秀賞の『らいふ』はいのちとはなにかを絵本というスタイルでシンプルに表現した作品。短いことばに輪郭のはっきりした線と鮮明な色の絵が一気に目へとびこんできます。デッサン力にすぐれた絵も効果的です。タイトルは「らいふ」ではなく最後の頁のことば「いのちはめぐる」の方がいいと思いますが。(西本)

「いのち」について、シンプルに対比法で語りかける絵本。そういう意味では、読みやすく、ビジュアルも適切でした。
ただどこか当たり前で終始しました。
一般論ではない作者自身の生々しい具体的な命を感じる場面が欲しかったです。綺麗な道徳教科書にもみえます。
ぼくにとって絵本は、具体的な目の前のパッションを落とし込むものだと思っています。
もう一歩踏み込んでみると、見えてくるかもしれません。
でも、大事なとこはそこなんです。(藤本)

優秀賞 まつりのひに 作:竹島 亜紀子

優秀賞 まつりのひに 作:竹島 亜紀子
優秀賞の「まつりのひに」は昔話風のわかりやすいお話で、唄のうまい主人公と鬼の子や地蔵との交流が楽しく描かれています。いささかクラシックなお話であっても絵本にふさわしいお話づくりで、文章にもムダがありません。おおらかで色づかいのたくみな絵もお話にぴったりです。登場人物の着物を織物柄にしたセンスを買います。(西本)

和風の絵のテクニックは美しくて、原画は飾りたいくらい。お話は創作昔話の王道的展開です。が。主人公がもっと困ったり、もっと主人公の能力で解決に結びついたりの山場が欲しかった。
お話は一応の起承転結で作れます。
ですが、読者がまた読みたいとか、もっと読みたいと、 作者に惚れるには、もっと大きくて深い物語が欲しいのです。
あと、もう一押しです (藤本)

優秀賞 のどぼとけ 作:やまもと なおこ

優秀賞 のどぼとけ 作:やまもと なおこ
優秀賞の「のどぼとけ」は一人で生きることの大切さを淡々と語りかけるメッセージ性の強い作品です。いきなりおじいちゃんの死から始まり、火葬場でのどぼとけを取り出すところから展開するリアルなストーリーですがしっかりと胸にひびきます。白黒だけの絵であってもたくみな筆づかいで、どの場面も臨場感があります。(西本)

おじいちゃんの遺骨の「のどぼとけ」という着眼点とセレクトしたモノクロの鉛筆画は面白いなと思いました。また表紙がほぼ遺影という大胆さには驚きます。しかし、おじいちゃんの教え、誰にでもあるのどぼとけ、大切ないのち。
それらテーマがバラバラに並ぶだけなので、まとまりに欠け、物語も唐突に終わる感じでした。
物語の整理が必要です。多くを語り切らなくていいのです。そこをこそ。(藤本)

佳作 ありがとう こそばゆ くん 作:にしやま よーいちろー

佳作 ありがとう こそばゆ くん 作:にしやま よーいちろー

佳作 レンタルペットはいかが? 作:山内 優歌

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佳作 ちきゅうより おおきくなった ぐうたらくん 作:とことこ

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佳作 きぶんやさん 作:おりと しのぶ

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