こころの糧
第44回仏教伝道文化賞座談会~ほほえみと法音のしらべ~下巻

- 沼田会長(写真左)と飛鳥師(写真右)
- 沼田 :
- 飛鳥先生は、音楽を視点に仏教伝道に尽くされてこられましたね。
- 飛鳥 :
- 私が今回認めて頂いた業績は、実は私の業績ではなくて、仏教音楽に関わってみえた先輩諸賢の残された業績の集積によるものです。明治維新前後に開教活動された西洋各国のキリスト教徒からもたらされた「賛美歌」に刺激をうけた仏教徒が、「仏教唱歌」「讃仏歌」の運動を展開し、「節談説教」などの音楽的布教方法からの転用に努めました。以後100年あまり、本格的な洋楽手法による仏教音楽作品が数多く発表されました。その業績があってはじめて成り立つ研究と蒐集に過ぎません。その作品や作曲家方への授賞と思いながら、頂戴しました。
- 沼田 :
- 仏教伝道協会でも仏教音楽祭を行ってきましたが、開催にあたって多大な御協力を頂いており、感謝申し上げる次第です。
- 飛鳥 :
- 1960年前後だったかと思いますが、仏教伝道協会の発願者、沼田惠範前会長様にお会いする機会がありました。その時、話が音楽活動に及び、戦前には「仏教音楽協会」や「日本仏教童謡協会」などが、通仏教の立場で活発に展開されていたが、戦後は経済的にゆとりを得た教団が、宗祖の遠忌法要を厳修する記念に、宗祖顕彰などそれぞれの教団の特色を誇示する大曲講演を競争する形なり、釈尊讃仰や仏教徒共通の仏教讃歌が創作されずに歌われていないのは残念です、と申し上げたことがありました。その後、仏教伝道協会は1977年11月28日に、発願者・沼田惠範師が築地本願寺へパイプオルガンを寄付されて、第一回「東西の出会い」というコンサートが開催されました。それ以来、コンサートは度々開催され、1983年には「世界仏教音楽祭」として公募作品発表公演が開催されました。
当時龍谷大学教授だった山崎昭見先生のご紹介で、飛鳥コレクションの紹介と小論が1989年の「第3回世界仏教音楽祭『釈尊を讃えて』」誌に載りました。また、仏教音楽研究大会も度々開かれまして参加させて頂きました。コンサートは毎回聴きに出かけていました。
- 沼田 :
- 幼少の頃から仏教音楽に接してこられたのですよね。
- 飛鳥 :
- 日曜学校やボーイスカウトの児童と歌い楽しみ、合唱団で共にハモった仲間の歌声の中に、さらに楽しく満たされる曲がないかと尋ね求めて、現在に至ったという次第です。
- 沼田 :
- 仏教音楽の研究・向上・普及に尽くされてきた想いも相当なものですね。
- 飛鳥 :
- 洋楽系の仏教音楽は、まだ一世紀にもならぬ作品群なので、音楽学としての体系も作曲理論の確立もされていないまま、主として仏教的詩歌に作曲家が東洋的または「声明」に依存した歌曲を付して創作された作品群といっても過言ではないと思います。
黛敏郎がなさった梵鐘の音響分析研究や、1966年より始まった国立劇場開場記念公演として開催され続けられている「声明公演」の影響を受けて創作され出した「仏教音楽」が、今大きく働き出しましたが、まだまだ模索の状況といえます。
それなのに、それらの作品も再演される機会が少ないため忘れられ埋もれていますし、原譜の所在も定かでないものが多く、教団の内部ではそれぞれ多用されている歌曲はありますが、仏教界全体としては、資料蒐集や学問的研究を対象とする人材が少ないため、日本の洋楽界では、仏教音楽系音楽とキリスト教系音楽との差は大きく、見おとされているのが実情です。
細々ながら、「仏教音楽コレクション・A」を主宰してきたのは、少しでもこの状況に応えることが出来れば、との思いからでした。
- 沼田 :
- 佐久間先生は仏教と絵画の接点を、飛鳥先生は仏教と音楽の接点から仏教伝道に尽力されてこられ、本当に頭がさがります。

- 飛鳥師を囲んで談笑
- 飛鳥 :
- 釈尊は悟りを開かれた後、5人の比丘(ビク)に初めて説法をなさいました。初転法輪といわれています。それ以来、釈尊は生涯、法を話し続けられました。語は音声です。即ち、法を説く、それは音声で十方の衆生に法を届けることです。釈尊の音声説法は、さぞかし衆生には心地よく、ほがらかに聞こえたことでしょう。法音は、本来すでに十方世界に自然快楽音(ジネンケラクオン)として響いていました。金子大栄先生は、仏の浄土は光と音と香りの世界だと申されています。阿弥陀経には浄土の荘厳としての、水のせせらぎや、木々を吹き渡る風の音などが微妙に響き合って法を説き、衆生に悟りと懺悔の境地へと導き、さらに仏・法・僧の三宝を尊ぶ世界、安楽国土が語られていまして、仏法は音楽世界と知られます。お念仏がまさにそうなのです。
- 沼田 :
- 仏教伝道協会も仏教音楽祭を開催することで、仏教音楽のさらなる発展の一助になれればと考えております。
- 飛鳥:
- 仏教音楽の発展には、仏教音楽の理論を明確にし、洋楽界に市民権を持たなければなりません。宗派や教団のセクトを超えた協力体制をとる運動に展開し、広く数多く公演されて人々の心の奥に仏教音楽を届けるご縁を深めねばなりません。
その為には、埋もれている名曲の再演も大切ですし、新曲の創造努力に尽くすべきです。今、最も求められているのは、「仏教詩」であります。詩と曲は相依相関の関係です。詩人の発掘と協力なくして新曲は生まれ得られぬと申しても過言ではありません。
- 沼田 :
- 宗派を超えて活動する仏教伝道協会の役割はそこにあると考えています。また、そこから現代社会において、仏教はどのような社会貢献ができるかを模索、実践して行くことが必要であると思っています。
- 飛鳥 :
- 情報化社会にあって、人は孤立しても生きてゆけるが如き誤った孤独世界観を深めています。その様な考えは排他的になり、格差社会化を早めてゆくのではないでしょうか。この人間理解の誤解を解き、縁起生の世界観を説く仏教でなくては、共生できる世界は、開けません。真実の仏法を説き、呼びかけることを求められていると、強く自覚し行動するべきです。それは貢献ではなくて、人間に求められている人間への願いでありましょう。
- 沼田 :
- 最後に、仏教伝道協会に期待することなど、ひと言お願いできますか。
- 飛鳥 :
- 期待ではありません。発願者沼田惠範師の念願のさらなる前進を望むや、切実なるものがあります。唯々、協会の種々なる菩薩行に関わってくだされてある各位の御精励を念じ、合掌申し上げます。
仏教伝道協会が人間の無明界を照らす燈炬であり続けられますよう、念じ上げております。
- 佐久間:
- 仏教伝道協会が一層、本当の「仏心」と「美」を、この世に贈って下さるようお願いします。
- 沼田 :
- ありがとうございました。先生方から頂いたお話をもとに、さらなる仏教伝道活動を行いたいと思います。
この度は、本当にご受賞おめでとうございました。
(終)






